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霧の朝は早起きのごほうび。尾根で光を待った四十分

小野寺 遥2分で読めます110

前の晩の天気予報で、翌朝は放射冷却で冷え込み、谷に霧が出やすいと言っていました。風が弱く、空は晴れる。こういう日は、低山でも雲海のような景色が見られることがあります。

目覚ましを四時にかけて、始発に近い電車に乗りました。登山口に着いたのは六時前。空はまだ紺色で、ヘッドランプを点けて歩きはじめました。

尾根に出るまでの一時間

樹林帯の登りは、暗いうちは足元しか見えません。落ち葉が湿っていて、何度か滑りそうになりました。こういうとき、カメラはザックの中に入れたままにしています。転んだときに手をつけないのがいちばん怖いので。

三十分ほど登ると、木の間から空が白んでくるのがわかります。鳥の声が急に増えて、少し気持ちが軽くなりました。

霧の上に出た

尾根に出たのは六時五十分ごろ。眼下の谷がすっぽり白い霧に埋まっていて、向こうの山の稜線だけが島のように浮かんでいました。

すぐに撮りたくなりましたが、太陽はまだ山の陰です。光が霧に当たるまで待つことにして、倒木に腰を下ろしました。魔法瓶のお茶がおいしかった。

待っている時間に、景色は少しずつ変わる。変わっていく途中を見ているのが、たぶんいちばん楽しい。

これは、山の写真を撮っている知人が言っていたことです。四十分のあいだに、霧は何度も形を変えました。谷の奥へ流れていったり、尾根を越えてこちらへ上がってきたり。

撮ったのは三十六枚

七時半ごろ、ようやく太陽が稜線から顔を出し、霧の表面がうっすら金色になりました。そこからの十分ほどで三十六枚撮って、家で見返して残したのは四枚です。

残した写真に共通していたのは、手前に何か一つ入っていること。枯れたススキだったり、尾根の岩だったり。霧と遠くの山だけだと、写真ではどこか平らに見えてしまうようです。

下山して駅前の食堂で朝定食を食べても、まだ九時でした。早起きは苦手ですが、こういう朝があるからまた目覚ましをかけてしまいます。

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